インドネシアで会社を設立する際に、分かりにくい概念として「資本（資本金）」と「総投資額」があるので、説明しておきたいと思います。

まず資本の種類として、①授権資本（modal dasar）、②引受資本(modal ditempatkan)、及び③払込資本（modal disetor）の３種類があります（インドネシア会社法１５条１項d）。

①授権資本とは、会社が発行できる株式の総数で、いわゆる発行枠のことです。
②引受資本とは、株主に引き受けられる資本の額のことをいいます。
③払込資本とは、実際に株主が払い込んだ資本の額のことをいいます。

インドネシアの会社法上、設立段階で、授権資本のうち少なくとも２５％は引き受けられ、かつ払い込まれなければならないとされています（会社法３３条１項）。

また、増資の際には、新株式発行に際して引き受けられる資本額全額が、その都度、払い込まれなければならないと定められております（会社法３３条３項）。

したがって、現在のインドネシア会社法では、株主によって引き受けられた株式は、全額払い込まれなければならないため（会社法３３条１項及び同３項）、引受資本と払込資本を区別する実益はありません。

ここで、投資調整庁（BKPM）令２０１８年６号６条３項bは、外資企業における引受資本かつ払込資本の額を、最低２５億ルピアであると定めています。

そのため、 かかる規定に基づき、外資企業の資本金は、設立時に、最低額の２５億ルピアとされることが多いです。 なお、外国資本がわずかでも入っている場合には、外資企業となりますので注意が必要です。

その後、BKPM令２０１８年６号はBKPM令２０１９年５号により撤廃され、またBKPM令２０１９年５号もBKPM令２０２１年４号により撤廃されました。そして、BKPM令２０２１年４号の１２条７項によって、外資企業における引受資本かつ払込資本の額は、最低１００億ルピアに改められました。

つぎに、「総投資額」について説明します。
同じくBKPM令２０１８年６号の６条３項aにより、別途例外がない限り、外資企業は、土地・建物を除く総投資額 （total nilai investasi） が１００億ルピア超というルールを満たすことが求められております。

この「総投資額」 （total nilai investasi） とは、株式による出資、親会社等からの借入れ、内部留保の利用等により、外資企業が調達し、事業に使用する金額の総額を意味しています。

なお、建設や不動産事業を行う外資企業の場合には、上記投資額に土地建物を含めて考えることができるとの規定がありましたが（同BKPM令６条４項a）、同4項は、2019年7月22日制定（同月29日法制化・施行）のBKPM令２０１９年５号により、削除されました。

前述のとおり、BKPM令２０１８年６号、BKPM令２０１９年５号は撤廃されており、BKPM令２０２１年４号が施行法令となります。 BKPM令２０２１年４号の１２条２項によると、最低投資額は、土地建物を除き、プロジェクト場所ごと、KBLI５桁の事業分野ごとに、１００億ルピア超と規定されており、これが原則となります。 但し、同条３項において、卸売業、飲食サービス業、建設サービス業、製造業、及び建設不動産業の最低投資額については、上記の例外が記載されおります。

 

このように、「総投資額」は、「資本」とは異なる概念ですので、注意が必要です。

※上記は、筆者の見解を交えた説明であり、個別事例への適用については一切の責任を負えません。個別の案件に関しては、別途ご相談ください。

弁護士　味村祐作