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代位弁済に関するインドネシア民法の条項

以下は、2015年10月31日のブログ記事の移管です。

P.S. 写真は、インドネシアの島(Pulau Macan)にて撮影。ジャカルタから船で行けて、休日を過ごすのに良い場所です。

インドネシア民法(代位弁済)

ここ数日、中間試験やレポートが重なっており、更新が遅れておりました。

インドネシアに来て、色々と不思議なことはありましたが、試験日とレポートの提出日が同じ日に設定されていることには、驚きました。このレポートは、試験後の講義で使う発表資料なので、試験とは直接関係ありません。また、試験日の2週間前にレポート内容が発表されます。試験勉強のことを考えれば、もう少し日程調整できるようにも思いました。

さて、インドネシア民法の読み方が難しいと感じているこの頃、その一例を紹介したいと思います。インドネシア民法は、オランダ植民地時代(1847年4月30日公布)のオランダ語で書かれたものが、現在も施行されています。インドネシア人もインドネシア語や英語に翻訳して使用しています。

なお、婚姻関係にある妻の法律行為を制限する条項等の一部条項は、最高裁判所回状などの影響により、その効力を現在は失っています。

(追記)

他方で、最高裁判所回状には下級審裁判所を拘束する法的効果がないため、同状に無効と記載された条文であっても、実際には有効に適用されているもの(例:民法1238条 履行遅滞における催告)があります。

このように、インドネシア民法の原文は、オランダ語で、かつ150年以上前の古い文章です。オランダからの留学生に聞いても、このオランダ語は古くて読めないし、また英訳も古い文章で分かりにくいとのことでした。

そして、民法の中でも、「代位弁済」の条文は、特に分かりにくいように思います。

1402条1項

(原文 オランダ語)

Subrogatie heeft plaats uit kracht der wet:
1o. ten behoeve van dengene die, zelf schuldeischer zijnde, eenen anderen
schuldeischer, die, uit hoofde van deszelfs bevoorregte schuld of hypotheek, een beter regt heeft, voldoet (Bw. 1133, 1382);

・以下の本による英訳

Subrogation based on the law:

1. In behalf of someone who is a creditor himself, but is indebted to another creditor, who will subrogate him, due to having better rights than the first because of his privileges on debt or mortgage.

・以下の本による英訳

Subrogation takes place by virtue of law:

1. for someone, a creditor who settles for another creditor, which based on his preference rights or hypothec, has a higher rank.

条文を読むだけでは、なかなか状況を想像し難いと思います。

講義を受けて理解した限りでは、この条文では、以下のことを意味しています。

一人の債務者に対して担保権を有する複数の債権者がいる状況で、後順位債権者が債務者に代わって先順位債権者に対する債務を弁済(代位弁済)した場合、当該弁済者(後順位債権者)は被弁済者(先順位債権者)の債権・地位を取得するということです。

例えば、以下のような状況で、

(債務者D/担保あり)        (第1順位債権者A・債権額500億ルピア)

総資産担保価値650億ルピア         (第2順位債権者B・債権額250億ルピア)

・                 (第3順位債権者C・債権額250億ルピア)

第3順位債権者Cが、債務者Dに代わって、第1順位債権者Aに500億ルピアを弁済した場合、CはAの債権と地位を承継し、第1順位債権者(債権額750億ルピア)に変化します。

(債務者D/担保あり)       (第1順位債権者C・債権額750億ルピア)

総資産担保価値650億ルピア       (第2順位債権者B・債権額250億ルピア)

この場合、Dの総資産担保価値は650億ルピアですので、Cは750億ルピアの債権について、650億ルピアを回収できることになります。

このように講義では説明があったのですが、以下のような疑問が残ります。

つまり、第3順位債権者Cが代位弁済せず、当初の法律関係が維持された場合、第1順位債権者Aが500億ルピア、第2順位債権者Bが150億ルピア、第3順位債権者Cが0ルピアの配当を受けることになるにも関わらず、第3順位債権者Cが債権者Aに代位弁済することで、第1順位債権者となったCが650億ルピアを回収し、当初150億ルピアを回収できるはずであった第2順位債権者Bが全く回収できなくなり、Bの法的地位を害するのではないかという疑問です。

そこで、Cが代位弁済した場合でも、Aの有した債権500億ルピアの限りで、Bに優先するのではないかと質問しました。このように理解すると、Aは500億ルピア、Bは150億ルピアを回収できることとなり、当初のBの法的地位を害さないからです。

しかし、回答としては、そうではなく、第1順位債権者となったAが650億ルピアを回収し、第2順位債権者Bは全く回収できないとのことでした。

法解釈としては、なかなか疑問の残る回答ですので、何か新しいことが分かれば、報告したいと思います。

(追記)

日を改めて、上記疑問について再度質問したところ、法律の記載通りに上記結果となるとのことでした。補足説明としては、Bは第2順位債権者であるから保護されないとのことです。

※なお、上記は、筆者の見解を交えた説明であり、個別事例への適用については一切の責任を負えません。個別事例への適用については、別途、専門家にご確認ください。

弁護士 味村祐作

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