弁護士 味村祐作の公式ブログ

インドネシア 契約書作成上の注意点 

インドネシア法を準拠法とする契約書を作成する際には、日本法とは異なるチェックポイントが存在します。

以下、代表的な例を紹介したいと思います。

・債務不履行(契約違反)だけでは、解除できない? 

インドネシア民法1266条は、契約の一方当事者による債務不履行を理由として契約を解除する場合、当該契約に債務不履行による解除が明記されていたとしても、裁判所に申し立てなければならないと定めています。また、当該契約に債務不履行による解除が明記されていない場合には、裁判所は、債務者からの要求により、一か月を超えない期間を付与して債務者に履行の機会を与えることができるとしています。

Art. 1266 “The condition of dissolution of the agreement is always implied as to occur in mutual agreements, in the event one of the parties does not comply with his obligation. In such event, the agreement is not dissolved according to the law, but the dissolution must be requested through the court. This request must be also submitted, even if the agreement should express the condition of dissolution due to non-compliance with the obligation. In the event the condition of dissolution is not expressed in the agreement, the judge is free, with due regard of the circumstances, at the defender’s request, to allow time to the defendant to comply as yet with his obligation, which time, however, may not exceed a period of one month.”

債務不履行の場合でも、裁判を行わなければ契約を解除できないという規定は、債務不履行を受けた側からすると、煩雑な規定ですので、実務上、民法1266条の適用を排除すると契約に定めるのが一般的です。

・保証条項の注意点

民法1831条は、保証人は、主債務者の財産で債務を支払いきれない場合でなければ、債権者に支払義務を負わないと定めています。債権者は、まず主債務者に請求し、それで満足を得られない場合に初めて保証人に請求できるという規定です。日本では、これを保証人の検索の抗弁権といい、インドネシア法でも同様の抗弁権が認められています。

Art. 1831 “The guarantor cannot be required to make payment to the creditor than in case of failure by the debtor, whose properties must be evicted first.”

また、民法1837条は、保証人が複数の場合、各保証人は保証債務を均等割合で負担する旨を定めています。つまり、主債務者が100万ルピアの支払債務を負っている場合で、保証人が2人いるとき、基本的に各保証人は50万ルピアずつ支払義務を負うというものです。

Art.1836 ”If several persons have bound themselves as the guarantors of one debtor and for the same debt, then each of them is bound for the total debt.”

Art.1837 “But each of them, if he has not waive his privileges to request for dividing of his debt, the first time he is charged before the Judge, may request that the creditor first divide his claims, and to deduct it as such that the portion of each guarantor which legally bound. If at the time one of the guarantors request for dividing of his debt, one or some of his joint guarantors is in the state of insolvent, then such guarantor shall be obliged to pay for the insolvent person in accordance to their proportion; but he shall not be liable if such insolvency occurred after the dividing of debt.”

実務上、契約書に保証条項を含む場合(保証契約の場合)、民法1831条と1837条の適用を排除して、債権者は、いきなり各保証人に全額請求できるようにしておくことが通例です。

・準拠法の選択はどうすべきか?

インドネシア企業との契約については、準拠法が問題となります。

インドネシア国内のビジネスに関する契約については、通常インドネシア法を準拠法とするものと思われます。この点、インドネシア法を準拠法にしたからと言って、直ちに不利になるというものではありません。

インドネシア企業との国際物品売買契約(輸出入を伴う物品の売買契約)においては、準拠法の選択により、「国際物品売買契約に関する国連条約」(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods: CISG)(以下「ウィーン売買条約」といいます)の適用が問題となります。

インドネシアは、現在、ウィーン売買条約の非締約国であり、インドネシア法を準拠法とする国際物品売買契約には、同条約は適用されません。

他方で、日本法を準拠法とする場合、日本はウィーン売買条約の締約国であるため、同条約の適用を排除する旨を合意しない限り、ウィーン売買条約が適用される点に注意が必要です。なお、売買契約書にインコタームズによることが明記されていれば、「慣習」として、ウィーン売買条約の規定に優先して、インコタームズの規定が適用される可能性があります。

・紛争解決は裁判?

インドネシアの裁判所では、残念ながら未だに賄賂の話が絶えず、できる限り利用しないほうがよいでしょう。

2018年11月28日の記事でも、南ジャカルタ地裁の判事らが贈収賄事件で汚職撲滅委員会(KPK)に逮捕されています。

色々なインドネシア人と賄賂の話をするのですが、印象的だったのは、あるインドネシア人弁護士と話していたところ、私が、裁判官のうち90%が賄賂に関与していると思うと話したところ、それは言い過ぎで、せいぜい80%であろうと言われたことです。(真実かどうかは別として、)インドネシア人弁護士も、80%もの裁判官が賄賂に関与していると認識していることに驚きました。

なお、外国公務員に対する賄賂は、不正競争防止法18条1項、21条2項6号、22条1項により禁じられており、日本法に照らしても刑事罰の対象ですので、絶対に行ってはいけません。

裁判以外の紛争解決方法としては、事前に契約当事者間で合意しておくことで、仲裁の利用が考えられます。

日本での仲裁も考えられますし、インドネシアにもBANI(Badan Arbitrase Nasional Indonesia)という仲裁機関が存在するので、同仲裁機関の利用があり得ます。

仲裁人は、国内外の著名な学者や弁護士等から選ばれ、経済的にも既に成功した人たちですので、インドネシアでも、賄賂が絡む可能性は低いといえます。

なお、日本の裁判を紛争解決手段と定めることはできますが、日本の裁判所の判決をインドネシアでの執行(インドネシア所在の財産に対する差押えなど)に用いることはできないので、注意が必要です。

・契約書は、インドネシア語で書かないと無効?

「国旗、国語、国の紋章及び国歌に関する法律2009年24号」第31条1項は、インドネシア当事者と契約を結ぶ際には、インドネシア語を使用する義務があるとし、同条2項で、外国当事者との契約について、当該外国当事者の国語及び/又は英語も用いられると定められています。

注意すべきは、インドネシア企業とアメリカ企業との間で、英語で締結された貸付契約につき、インドネシア最高裁判所が上記法律に基づき、インドネシア語で締結されていない同契約を無効であるとした判決があることです。

上記最高裁判決を考慮し、重要な契約については、インドネシア語版を作るとともに、それほど重要でない契約についても、インドネシア語版を作るか否か、また英語版だけを作るとした場合の記載ぶりについて工夫が必要です 。

2019年9月30日、「インドネシア語使用に関する大統領令2019年63号」が制定・法制化され、同日付で施行されたことにより、インドネシアに関する契約締結に係る実務運用を変更する必要が出てきました。詳細は、「契約書でのインドネシア語使用義務」をご覧ください(2019年10月17日追記)。

・契約は書面にしないと無効?

基本的に口頭での契約も有効ですが、一部の契約につき書面性が要求されます。

例えば、民法1851条は、和解契約を書面で締結しなければ有効でないとしています。

Art. 1851 ”Amicable settlement is an agreement, by which the two parties by surrendering, promising, or holding a certain property to terminate a pending case or prevent a case from arising out. This agreement shall not be valid unless it is executed in writing.”

また、インドネシア会社法56条は、株式譲渡につき譲渡証書の作成が必要と定め、書面性を要求しています。

上記のように、インドネシア企業と契約を締結する際には、インドネシア特有の注意点が存在しますので、専門家による作成・レビューが重要です。

P.S. アイキャッチ画像の写真は、インドネシア東ジャワ州のブロモ山で私が撮った写真です。お勧めの観光地の一つです。

※上記は、筆者の見解を交えた説明であり、個別事例への適用については一切の責任を負えません。個別の案件に関しては、別途ご相談ください。

弁護士 味村 祐作

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