2018年12月13日、インドネシア憲法裁判所は、女性の婚姻可能年齢を16歳と定める「婚姻に関する法1974年1号」第7条1項を、インドネシア憲法27条1項に反し違憲、また児童保護法違反であると判示しました。
インドネシア婚姻法は、婚姻可能年齢を、男性は19歳、女性は16歳と定めています(同法第7条1項)。
この規定については、両親からの要請で、裁判所等により例外が付与されることがあります(同法第7条2項)。
インドネシア婚姻法がこのように規定する理由として、若年で妊娠した女性が未婚の母となることを避ける目的があると説明されています。また、地方では年齢が正確に登録されていない人がいたり、婚姻条件を年齢ではなく各人の成熟度ではかる考えがあり、婚姻可能年齢について議論があったので、制度上婚姻年齢の例外を認めているとのことです。
かかる規定に基づき、インドネシアでは、現在も16歳又はそれより若い年齢で結婚する女性(女児)が、特に地方で多いようです。
ここにきて、インドネシア憲法裁判所が女性の婚姻可能年齢を16歳とする条項を、性別による差別として、違憲(憲法27条1項)と判示した背景には、インドネシアにおけるチャイルドマリッジ(児童婚)による児童福祉への悪影響、児童婚に伴う児童虐待などが社会問題となっていることがあるように思います。
なお、インドネシアの「児童保護法に関する法律2002年23号」は、18歳未満の者を「児童」(第1条1項)と定めており、憲法裁判所の裁判官も16歳での結婚は、児童婚に該当すると言っております。
他方で、女性の婚姻可能年齢を男性と同じ19歳に引き上げよという請求については、インドネシア憲法裁判所は、立法により解決されるべき問題であるとして、かかる請求を退けました。
憲法裁判所は、立法機関である国民議会(DPR:Dewan Perwakilan Rakyat)に対して、女性の婚姻可能年齢につき、3年以内の法律改正を命じておりますので、今後3年以内に法律が改正されるものと思われます。
※上記判決をうけて、「婚姻に関する法律1974年1号を改正する2019年16号法律」は、女性の婚姻可能年齢は男性と同じ19歳に引き上げました。
日本でも、女性は16歳(民法731条)から結婚可能と定められておりますが、晩婚化が社会問題となっていることはあっても、児童婚やそれに伴う児童虐待はニュースでほとんどみかけず、インドネシアとは、社会情勢に大きな違いがあるように感じました。
P.S. トップ写真は、インドネシア大学留学時に、憲法裁判所を見学した際のものです。憲法裁判所は、一部が博物館にもなっており、一般に見学可能です。
以前に私が書いたブログ記事を参考までに掲載します。
※上記は、筆者の見解を交えた説明であり、個別事例への適用については一切の責任を負えません。個別事例への適用については、別途、専門家にご確認ください。
弁護士 味村祐作
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