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インドネシア大学(憲法)

自分の書いた留学時代のブログを読み返していて気づきましたが、インドネシア憲法のネタが多かったですね。

2019年4月には、インドネシアで大統領選挙が予定されています。ジョコ・ウィドド現大統領が勝つか、 それともプラボウォ・スビアント候補が勝つか分かりませんが、いずれにしろ、前回同様に負けた方(前回はプラボウォ氏)は、選挙に不正があったとして憲法裁判所で争うのでしょうかね。

5年前の大統領選挙時と同じようなことが起こりそうな。。。

以下は、2015年10月2日のブログ記事の移管です。

講義の一風景(Indonesian State Institution)

先週、「Indonesian State Institution」のクラスで、キャンベラ大学のOwen Podger教授から特別講義(Theory of State Institution)がありました。

Owen教授は、インドネシア政府のコンサルタントとして組織改革に携わっていた方で、今回は、大統領制、議員内閣制など世界の統治システムについて講義がありました。

写真中央の白人男性がOwen教授で、その左隣がインドネシア大学のIsa教授です。

このクラスには、インドネシア人の他、ブルネイ人、フィンランド人(但し、オランダの大学からの留学生)、韓国人、日本人が在籍しております。

今週は、この講義で、インドネシアの行政(主に大統領)について勉強したので、そのことを少し書いていきます。

インドネシアの国家統治システムは、長期政権を握っていたスハルト元大統領が、アジア通貨危機を契機に失脚した後、1999~2002年の憲法改正を経て、大きく変わりました。

例えば、以前の憲法では、大統領には、DPR(国会)の承認のもと、立法権があるとされていたのに対し、1999年の憲法改正により、立法権はDPRにあり、大統領には立法提案権(憲法第5条(1))があると変更されています。

権力集中を防ぐため、憲法改正により、大統領の権限が制限された一例です。

なお、現在も、法案成立には、DPRと大統領双方の審議および同意が必要となっております(憲法20条(2)、(3))。

また、大統領は、以前はMPR(国民協議会)より任命されていたのに対し、現在は、国民からの直接選挙となっています(憲法第6条A(1))。

以前のMPRは、国民から直接選挙で選ばれる議員と軍や警察などの団体から任命される議員で構成されていたところ、スハルト元大統領は、各地に集票組織を作り、また団体からの議員を任命する権限を掌握することで、MPRを支配下におくことが可能となっていたようです。そして、このように構成されたMPRにより、大統領が任命されるシステム(からくり)であったことから、長期政権の確立が可能となったと聞いております。

インドネシア憲法を読んでいて、日本との差異を感じたのは、政党に関する記載が憲法にあり、政党の地位が明確になっている点です。

大統領および副大統領の候補者は、政党(またはその連合)により推薦されることになっています(憲法第6条A(2))。

また、以前は、大統領らの再選回数に制限がなかったため、長期政権の確立が可能でしたが、現在は、大統領および副大統領は、任期5年の再選1回までとされ(憲法第7条)、最大10年の任期となっています。

大統領が権力を独占した過去の経験から、任期が最大10年に限定されたようです。

この他、大統領による大赦制度、大統領(副大統領)の弾劾制度、大統領欠員時の補充制度などについて説明がありました。

大統領および副大統領の弾劾は、汚職等を理由に認められているのですが、弾劾が認められるためには、DPR(国会)による提案、憲法裁判所による調査・判断、MPRによる判断が必要とされており、ハードルはかなり高いようです(憲法第7条B)。

普段の仕事では、憲法に関わることは少なく、あまり意識していなかったのですが、インドネシアで現に汚職や賄賂が存在する事実を踏まえた上で、国の統治システムのあり方を考えると、なかなか興味深いものがあります。

弁護士 味村 祐作

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