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組合契約(パートナーシップ)

以下は、2015年10月12日ブログ記事の移管です。

パートナーシップ契約

インドネシアのパートナシップ契約(組合)について、紹介したいと思います。

インドネシアには、以下の3種類のパートナシップ契約が存在します。
なお、基本的に外国資本による利用は認められておりません。
1 Maatschap

2 Vennootschap onder Firma(Firma)

3 Commanditaire Vennootschap(C.V.)

インドネシアでは、オランダ統治地時代の影響を受け、法律用語にオランダ語がよく出てきます。上記もオランダ語です。

1 Maatschapについて

パートナーシップ(Maatschap)とは、2人以上の者が、金、物、労力を出資し、その構成員(パートナー)に利益を分配する目的で共同事業を営む内容の契約です(インドネシア民法1618条)。

Maatschapは、インドネシア民法に規定された基本的なパートナシップ(組合)契約で、主に弁護士、コンサルタントなどのプロフェッショナルに利用される契約形態です。法人格はありません。

(1)パートナー間の法律関係

・代表パートナーまたはマネージャー(パートナー以外の第三者)を定めた場合は、代表パートナーまたはマネージャーが、Maatschapを代表する権限を有します。

この場合、他のパートナーには、代表権がありません。

もちろん、代表パートナー等を辞めさせ、また交代させることは可能です。

・他方で、上記代表パートナーまたはマネージャーの定めがない場合は、各パートナーが、Maatschapを代表する権限を有します。

この場合、各法律行為に異議のあるパートナーは、当該法律行為が行われる前に異議を述べることで、当該法律行為に関する責任を免れることがます。

(2)第三者との法律関係
第三者は、代表権限を有しないパートナーとの法律行為に関して、当該行為を行ったパートナーに対してのみ責任追及でき、他のパートナー(Maatschap)に対しては、何ら権限を有しないのが原則です(民法1642条)。

無権限のパートナーを信じた第三者に対して、表見代理による保護はありません。ですので、Maatschapとの契約時には、とくに代表権限の有無が不可欠です。

ただし、例外として、全パートナーの同意がある場合、また当該法律行為がMaatschapに有益である場合には、第三者はMaatschapに対して権利を有するとされています(民法1644条)。もっとも、「Maatschapに有益」との意義については、更に調査が必要な点として残るように思います。

また、Maatschap(全パートナー)との間で契約が成立した場合、当該契約時に第三者が各パートナーの持分割合を知らされていた場合を除き、各パートナーは、その持分割合に関わらず、均等割合で、第三者に責任を負うことになります。

この場合は、持分割合との差額に関して、他のパートナーと内部的に調整されることになるものと思われます。

(3)損益の分配

・Maatschapの損益は、原則として、パートナー間で、その合意に基づき、自由に分配方法が決定されます。

但し、①損益分配に関する合意がまとまらない場合に、パートナーの一人または第三者にその決定を委ねる合意(民法1634条)、および②パートナーの一人に全利益を分配する合意(民法1634条)は、禁じられています。
これは、利益をパートナー間で分配するというパートナーシップの目的に反するからではないかと考えます。

他方で、パートナーの一人に全損害を負担させる合意は有効です(民法1635条)。

・分配に関する合意がまとまらない場合、各パートナーの出資額に応じて分配されます。

なお、労務のみを出資したパートナーに対しては、現金または物の出資者のうち、最低額の出資者と同額を出資したものとして、分配されます(民法1633条)。

(4)パートナーの地位の譲渡

パートナーシップ契約に別途規定のない限り、他のパートナーの同意なく、パートナーの地位は譲渡できません(民法1641条)。

(5)解散事由(民法1646条)

以下のとおり、解散事由が定められています。

①パートナーシップ契約に定められた期間の満了

但し、期間満了後も活動を継続した場合、当該Maatschapは、期間の定めないのパートナーシップ契約とみなされます。

②パートナーシップ契約で定めた目的の達成または不達成

③パートナー(単独または複数)の意思

・期間の定めがあるパートナーシップの場合、当該期間満了前は、全パートナーの同意、または裁判所命令(パートナーの義務違反・継続的疾病により業務実施不可能などの理由)がない限り、パートナーシップの解散は不可能となっています(民法1647条)。

・期間の定めがないパートナーシップの場合、時機に応じかつ善意であるときに、パートナーシップを解散することができます(民法1649条)。

④パートナーの死亡、後見開始、破産

(6)清算

清算手続きは、通常、パートナーに選任された清算人によって行われます。清算人選任の合意ができない場合には、パートナーが共同して清算手続きを行います。

2 Vennootschap onder Firma(Firma)について

Firmaは、一般的にトレーディング、サービス事業などのビジネス形態で利用されるパートナシップ契約です。

Firmaは、インドネシア商法に規定されていますが、特別法たる商法に記載のない事項は、一般法である民法が適用されます。そのため、商法に規定のないパートナー間の法律関係などは、Maatschapと同様に民法の適用を受けます。

Firmaの特徴としては、Maatschapと異なり、common (trade) name(一般名称)を用いて、ビジネスを行う点があります。

(1)登録

Firmaは、裁判所に登録することができ、登録後は、官報公告されます。

未登録のFirmaは、事業目的が限定されておらず、各パートナーの権限に制限がなく、また存続期間の定めがないものとみなされます。

他方で、登録済みのFirmaの場合、権限のないパートナーと法律行為を行ったことによる危険は、第三者が負うことになります。

(2)資産

Firmaに法人格は認められていないものの、Firmaは、Maatschapとは異なり、各パートナーの資産とは別にFirma独自の資産保有を観念しているようです。

そのため、Firmaの債権者は、各パートナーの債権者に優先して、直接、Firmaの資産に対して権利行使を行えます。

この点、各パートナーの債権者は、Firmaの清算により、各パートナーの資産として、Firmaの資産が分配された後に、それに対して権利行使できます。

なお、Firmaには法人格がないので、全パートナーは、Firmaの債権者に対して無限責任を負います(商法18条)。

(3)第三者との法律関係

Firmaの各パートナーは、基本的に、その事業の範囲内において、Firma名義で法律行為を行う権限があり、かかる行為は第三者とFirmaとの間で法的効力を生じさせます(商法17条)。

3 Commanditaire Vennootschap(C.V.)について

C.V.も、Firma同様に商法(19~21条)に規定されたパートナーシップで、通常パートナーとサイレントパートナーにより構成されています。

サイレントパートナーは、現金により出資を行い、その出資額の範囲でのみ責任を負う点が、通常パートナーと異なります。

C.V.の運営は、通常パートナーにより行われ、第三者はC.V.または通常パートナーに対してのみ権利行使が可能となります。

但し、サイレントパートナーが、C.V.の運営に関与し、またはサイレントパートナーの名称がC.V.の名称に組み込まれた場合には、通常パートナー同様の責任が発生します(商法20条、21条)。

この場合、サイレントパートナーは、自動的に通常パートナーへと地位が移転すると考えられます。

以上が、インドネシアにおけるパートナーシップの概括的説明になります。

なお、上記は、筆者の見解を交えた説明であり、個別事例への適用については一切の責任を負えません。個別事例への適用については、別途、ご相談ください。

弁護士 味村祐作

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